朝、目覚ましが鳴って「起きなきゃ…」と思いながら、つい手を伸ばして二度寝してしまう。
その数分がとても幸せな一方で、「二度寝って体に悪いのかな?」「クセになって大丈夫?」と不安になることはありませんか。
二度寝は、やり方や頻度によっては体内時計を乱したり、日中のだるさ・集中力低下につながることがあります。
一方で、上手に付き合えば、疲れた体と心を回復させる助けになる場合もあり、一概に「二度寝=悪」とは言い切れません。
この記事では、医療・睡眠の専門家の視点から
二度寝のリスクと、問題になりにくい二度寝のライン、そして今日からできる対策 をわかりやすく解説します。
「やめたいけどやめられない」「上手に付き合いたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
二度寝ってそもそも何?どこからが「二度寝」なのか
一般的な二度寝の定義
一般的に「二度寝」とは、一度目覚めたあとに再び眠りにつくことを指します。
目覚ましが鳴って止めたのに、そのまま布団の中で再入眠してしまうパターンや、一度起き上がってトイレなどに行ったあと、もう一度布団に戻って寝るパターンも二度寝に含まれます。
重要なのは、「本来起きるはずの時間を過ぎて、睡眠を継続・追加している」という点です。
自分で意図して「あと○分だけ」と決めているのか、気づいたら長く寝てしまっているのかで、体への影響も変わってきます。
仮眠・うたた寝との違い
二度寝と混同されやすいのが、日中の「仮眠」やソファでの「うたた寝」です。
仮眠は、日中のパフォーマンスを上げる目的で、意識的に短時間(20〜30分程度)眠るもので、夜〜朝の主な睡眠とは別枠と考えられます。
一方、二度寝は「本来の起床タイミングからの延長」なので、体内時計や生活リズムにダイレクトに影響します。
同じ“少し寝る”でも、いつ・どのような意図で眠るか によって、体への影響は大きく変わるのです。
二度寝は体に悪いって本当?科学的に考えるリスク
体内時計が乱れるリスク
私たちの体には「体内時計(概日リズム)」があり、毎日ほぼ同じ時間に起きて動き始めることで整えられています。
本来起きるはずの時間から何度も二度寝をしていると、起床時刻がその日ごとにバラつき、体内時計が少しずつ後ろへずれていきます。
体内時計が乱れると、寝つきが悪くなったり、夜更かしが習慣になったりと、悪循環に陥りやすくなります。
結果として、「二度寝のせいで、さらに翌朝がつらい」状況が続きやすくなるのです。
睡眠の質が下がる可能性
一度目の目覚めの時点で、睡眠は一旦終盤に差し掛かっています。
そこから再び眠りにつくと、深い眠りには入りにくく、浅い眠りをダラダラと続ける形になりやすいです。
浅い睡眠が長引くと、起きたときに「たくさん寝たのにスッキリしない」「頭が重い」と感じやすくなります。
“寝た時間”よりも、“睡眠の質”が大切 という点を覚えておきましょう。
日中の眠気・だるさ・集中力低下
二度寝を繰り返すと、体が「いつ本当に起きればいいのか」を判断しにくくなります。
起床時に分泌されるホルモンや自律神経の切り替えがスムーズにいかず、午前中にボーッとしたり、頭が冴えない状態が続きやすくなります。
その結果、仕事や勉強のパフォーマンス低下・ミスの増加など、日常生活への影響も無視できません。
「少しの二度寝で得られる気持ちよさ」と「一日中続くだるさ」を、天秤にかけて考えることが大切です。
生活リズムの慢性的な夜型化
二度寝が習慣化すると、自然と起床時間が遅くなり、夜に眠気が来るタイミングも後ろへずれていきます。
すると「夜なかなか眠れない→朝起きられない→また二度寝」という負のスパイラルにはまりがちです。
特に平日も休日も二度寝を繰り返していると、慢性的な夜型生活になりやすく、健康面だけでなく社会生活にも影響が出ます。
“たまの二度寝”なのか、“生活パターンとしての二度寝”なのか を区別することが重要です。
「危険な二度寝」と「そこまで問題ない二度寝」の違い
注意が必要な二度寝のパターン
次のような二度寝パターンが続いている場合は、注意が必要です。
- 平日に毎日1〜2時間以上二度寝してしまう
- 仕事や学校に遅刻しそうになるレベルで起きられない
- 二度寝をしても「スッキリしない・頭痛や強いだるさが続く」
こうしたケースでは、生活リズムだけでなく、ストレス過多や心身の不調が隠れていないか確認する必要があります。
そこまで神経質にならなくてよいケース
一方で、すべての二度寝がNGというわけではありません。
- 休日に30分以内の軽い二度寝
- 前日の睡眠不足を1回だけ補う程度
このくらいであれば、その後の日中の体調やパフォーマンスに問題がなければ、そこまで神経質になる必要はありません。
大事なのは、「日常生活に支障が出ているかどうか」という視点で判断することです。
うつ・睡眠障害などが隠れている可能性
「毎晩しっかり寝ているはずなのに、朝まったく起きられない」「10時間以上寝ているのにいつも強い眠気がある」という場合は、二度寝だけの問題ではないかもしれません。
うつ病や不安障害、過眠症、睡眠時無呼吸症候群など、専門的なケアが必要な状態が隠れている可能性もあります。
気分の落ち込み・興味の低下・やる気のなさが強いときや、家族からいびきや無呼吸を指摘されるときは、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
「甘え」や「気合い」の問題として片づけず、客観的に自分の状態を見つめてみましょう。
二度寝の「気持ちいい」には理由がある|メリット面も整理
副交感神経が優位になりリラックスできる
二度寝が「最高のご褒美」のように感じられるのは、副交感神経が優位になり、体と心がリラックス状態になるからです。
一度目覚めたあとに「もう少し眠れる」という安心感が加わることで、心地よさが増して感じられます。
適度なリラックスはストレス軽減にもつながるため、二度寝そのものがすべて悪いとは限りません。
ただし、その心地よさを追い求めて眠りすぎると、かえって体調を崩す原因になることもあります。
心理的な安心感・ご褒美感
「あと5分だけ…」という二度寝には、心理的なご褒美の要素も含まれています。
忙しい毎日の中で、自分に少しだけ許した“甘え”が、心の余裕や幸福感につながることもあります。
ただ、そのご褒美が「遅刻や自己嫌悪」につながってしまうと、メリットよりデメリットが大きくなってしまいます。
心と体のバランスが取れる範囲で、ほどほどに取り入れる ことがポイントです。
上手に使えば“短時間の二度寝”は回復の助けになる
前日の疲れが強いときや、どうしても睡眠時間が足りなかったとき、短時間の二度寝は体の回復を補う役割を果たします。
特に休日など、日中に影響が出にくいタイミングを選んで、20〜30分程度にとどめれば、負担は比較的少なくて済みます。
大切なのは、「ダラダラと長引かせない」「起きる時間をあらかじめ決めておく」というルールです。
次の章では、二度寝と上手に付き合うための具体的な“OKルール”をご紹介します。
二度寝とうまく付き合うための「OKルール」
時間は「20〜30分以内」を目安に
二度寝をするなら、目安は20〜30分以内にとどめるのがおすすめです。
それ以上長く眠ってしまうと、深い眠りに入りかけて再び起こされることで、強いだるさや頭の重さを感じやすくなります。
短時間であれば、脳や体を軽く休めつつも、起きた後の活動への切り替えがしやすくなります。
二度寝をする前に、スマホのタイマーなどをセットしておくと安心です。
午前中の早い時間にとどめる
二度寝をするなら、午前中の早い時間帯にとどめることも大切です。
午前遅くまで寝てしまうと、夜の寝つきが悪くなり、翌日の起床時間もさらに遅くなってしまいます。
特に休日は、平日との差が大きくなりすぎないように注意しましょう。
平日との起床時間の差は2時間以内に抑える ことを目安にすると、体内時計の乱れを最小限にできます。
カーテンを開けて光を取り入れ、完全な真っ暗にはしない
二度寝をするとき、部屋を真っ暗にしてしまうと、体が「まだ夜」と勘違いしてしまいます。
カーテンを少し開けて朝の光を取り入れたり、間接照明をつけておくことで、「朝だけど少し休んでいる」という状態を作りやすくなります。
明るさがあることで、深い眠りに入りにくく、短時間の二度寝で目を覚ましやすくなります。
“完全に夜モード”に戻さない工夫も、体内時計を守るポイントです。
二度寝したら、その分夜は少し早く寝る
どうしても二度寝をしてしまった日は、そのまま放置せず、「夜の就寝時間で調整する」ことも大切です。
たとえば朝に30分余分に寝たなら、夜はいつもより30分早くベッドに入る、といったイメージです。
一日のトータル睡眠時間が大きく変わらないように調整すると、リズムの乱れを最小限に抑えられます。
二度寝を“その場しのぎ”で終わらせないで、1日の流れで考える ようにしてみてください。
二度寝をやめたい人のための具体的な対策
そもそも「根本の睡眠不足」を解消する
二度寝がやめられない背景には、そもそも夜の睡眠時間が足りていないケースが多くあります。
必要な睡眠時間には個人差がありますが、多くの成人はおおむね7時間前後が目安と言われています。
まずは自分の「理想の睡眠時間」を仮決めして、その時間を確保できるように就寝時間を逆算してみましょう。
二度寝をやめるためには、「朝の気合い」よりも「前日の準備」が重要です。
起床時の環境づくり
起きるのがつらい朝は、環境の力も借りましょう。
目覚まし時計をベッドから手の届かない場所に置けば、「止めるためには一度起き上がる」ことが必要になります。
また、カーテンタイマーやスマートライトを使って、起床時間に合わせて部屋を明るくするのも効果的です。
光は体内時計をリセットする強力なスイッチなので、「二度寝モード」からの脱出を助けてくれます。
起きてすぐのルーティンを決める
「起きたらまず何をするか」をあらかじめ決めておくと、二度寝に戻りにくくなります。
例えば、ベッドから出たらすぐにカーテンを開ける、白湯を飲む、軽くストレッチをするなど、簡単なもので構いません。
毎朝同じ行動を繰り返すことで、そのルーティン自体が「起きるスイッチ」になります。
難しいことをしようとせず、30秒でできる小さな行動から始めてみてください。
スマホ・SNSが二度寝を招くパターンを断つ
ベッドの中でスマホを触っているうちに眠くなり、そのまま二度寝…というパターンもよく見られます。
寝る前や起きた直後のスマホは、目も脳も覚醒させてしまい、睡眠リズムを乱しやすくします。
対策としては、寝室にスマホを持ち込まない、もしくはベッドから離れた場所で充電するのがおすすめです。
起きてすぐスマホを開かないだけでも、二度寝の誘惑はぐっと減ります。
こんな二度寝は専門家への相談を検討してほしい
睡眠時間を十分取っているのに朝まったく起きられない
毎晩7〜8時間は寝ているのに、朝になるとどうしても起きられず、何度目覚ましをかけても二度寝してしまう。
こうした状態が長く続く場合、単なる生活習慣ではなく、睡眠の質や心身の状態に問題がある可能性があります。
自己判断で「自分は怠けているだけだ」と決めつけず、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
日中も強い眠気・集中力低下が続く
朝だけでなく、日中も強い眠気や集中力低下が続いている場合、慢性的な睡眠不足や睡眠障害が背景にあることも考えられます。
仕事中や運転中に眠気が襲ってくる場合は、事故やケガのリスクも伴うため、早めの対処が必要です。
生活習慣を整えても改善しない場合は、睡眠専門外来や心療内科などで相談してみましょう。
気分の落ち込み・不安・やる気のなさが強く、二度寝が増えている
最近、気分の落ち込みや不安感が強い、好きだったことにも興味がわかない…といった変化とともに、二度寝・長寝が増えている場合は、メンタル面の不調が影響している可能性もあります。
うつ病の症状の一つとして、「朝起きられない」「ベッドから出る気力がない」といった形で現れることがあるからです。
心当たりがある場合は、一人で抱え込まずに、信頼できる家族や友人、医療機関に相談してみてください。
睡眠時無呼吸症候群などの可能性にも注意
家族から「いびきがひどい」「寝ている間に息が止まっている」と指摘されたことがある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
この状態では、睡眠中に何度も呼吸が止まり、脳や体が十分に休まらないため、朝の強い眠気や二度寝の増加につながります。
放置すると、高血圧や心疾患のリスクも高まるとされています。
心当たりがあるときは、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。
二度寝に関するよくある質問Q&A
Q. 「5分だけ」の二度寝なら問題ありませんか?
A. 5分程度のごく短い二度寝で、その後スッと起きられて一日元気に過ごせるなら、大きな問題になることは少ないと考えられます。
ただ、「5分のつもりが30分以上になってしまう」「5分二度寝しないと起きられない」という状態なら、睡眠不足や生活リズムの乱れが隠れている可能性があります。
Q. 休日の二度寝はどこまで許容範囲ですか?
A. 休日に30分〜1時間程度の二度寝をする人は少なくありません。
ポイントは、平日との起床時間の差が2時間以内に収まっているか、そして二度寝しても日中だるさが残らないか です。
起床時間の差が大きくなると、いわゆる「社会的時差ボケ」を起こしやすくなります。
Q. 二度寝と「昼寝」はどう使い分ければいいですか?
A. 二度寝は朝の起床時間を後ろにずらす行為、昼寝は日中のパフォーマンスを上げるための短時間睡眠というイメージです。
朝はなるべく一定の時間に起きて、どうしても眠いときは日中に20〜30分の昼寝を取り入れるほうが、体内時計を乱しにくくなります。
Q. 二度寝すると頭痛が出るのはなぜですか?
A. 二度寝で睡眠が浅くダラダラ続いたり、長時間寝過ぎてしまうと、自律神経の切り替えがうまくいかず、頭痛やだるさが出やすくなります。
枕や寝姿勢の問題が重なっていることもあるため、「二度寝したときだけ頭痛が出るのか」「睡眠時間や寝方に何か特徴がないか」振り返ってみましょう。
頭痛が頻繁に続く場合や、いつもと違う強い頭痛がある場合は、医療機関での相談をおすすめします。
Q. 子どもの二度寝もよくないのでしょうか?
A. 成長期の子どもは大人よりも多くの睡眠が必要です。
多少の二度寝は問題ないことも多いですが、「朝まったく起きられず遅刻が続く」「日中ぼんやりしている」「いびきが強い」といった様子がある場合は注意が必要です。
生活リズムを整えても改善しないときは、小児科や睡眠専門医に相談してみてください。
まとめ|二度寝=悪ではなく「頻度と付き合い方」が大切
二度寝は、一律に「体に悪いから絶対ダメ」と決めつける必要はありません。
大切なのは、どれくらいの頻度・長さ・状況で二度寝しているのか、そしてそれが日常生活にどんな影響を与えているのか、という視点です。
短時間で、生活リズムを大きく崩さない範囲の二度寝であれば、むしろ疲れた心と体を癒やす役割を果たすこともあります。
一方で、毎朝のように長時間の二度寝を繰り返し、遅刻や強いだるさ・気分の落ち込みが続くようなら、専門家への相談も視野に入れましょう。
「二度寝を全部やめる」ではなく、「自分にとってちょうどいい付き合い方」を見つけていくことが大切です。
今日からできる小さな工夫を一つずつ取り入れて、無理なく“心地よい朝”を増やしていきましょう。


コメント