「寝ているはずなのに朝からだるい」「夜中に目が覚めてしまう」「睡眠の質を上げたいけど、何をすればいいのか分からない」
そんな悩みを解くカギが、レム睡眠とノンレム睡眠です。
睡眠は、ずっと同じ深さで続くものではありません。浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)が交互に訪れる“サイクル”で成り立っています。
この仕組みを知るだけで、睡眠の見直しポイントがクリアになり、「今日から何を変えればいいか」が具体的になります。
この記事では、レム睡眠・ノンレム睡眠の違いから、睡眠サイクルの考え方、乱れる原因、そして今日からできる快眠習慣まで、まとめて分かりやすく解説します。
レム睡眠・ノンレム睡眠とは?まずは基本をおさえよう
レム睡眠とはどんな状態?(夢を見やすい浅い眠り)
レム睡眠(REM睡眠)は「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」が由来で、眠っているのに眼球が素早く動くのが特徴です。
レム睡眠のイメージを一言でいうと、「体は休んでいるけれど、脳は比較的動いている浅めの眠り」。
レム睡眠の主な特徴は次の通りです。
- 夢を見やすい(特に内容を覚えていることが多い)
- 筋肉の力が抜けて、体が動きにくい状態になりやすい
- 脳はそれなりに活動していて、記憶や感情の整理に関わると考えられている
- 心拍や呼吸がやや不規則になることがある
「夢をよく見る=眠りが悪い」と感じる人もいますが、夢を見ること自体は自然です。むしろ「夢を見た」と自覚しやすいのは、レム睡眠のタイミングで目覚めた可能性が高い、というだけの場合もあります。
ノンレム睡眠とはどんな状態?(深くぐっすり眠る状態)
ノンレム睡眠(Non-REM睡眠)は「レム睡眠ではない睡眠」で、一般的にこちらが深い眠りを指します。
ノンレム睡眠のイメージは、「脳も体も省エネになって回復が進む眠り」。
主な特徴はこちらです。
- 脳の活動が落ち着き、休息モードになる
- 心拍・呼吸が安定し、副交感神経が働きやすい
- 体の修復や疲労回復が進みやすい(成長ホルモン分泌と関係があると言われることも)
- 深いノンレムの最中に起こされると、強い眠気やだるさ(睡眠慣性)が出やすい
「寝たのに疲れが取れない」「朝がつらい」という人は、睡眠時間の長さだけでなく、深いノンレム睡眠が十分に取れていない可能性もあります。
レム睡眠とノンレム睡眠は90分サイクルで交互にやってくる
レム睡眠とノンレム睡眠はバラバラに現れるのではなく、約90分前後の周期で交互に繰り返されるのが一般的です(個人差はあります)。
おおまかな流れはこうです。
- 寝始め(前半):ノンレム睡眠が多め(深い眠りが出やすい)
- 朝方(後半):レム睡眠が多め(浅い眠りが増える)
このサイクルが一晩におおよそ4〜6回繰り返されます。
つまり、睡眠の質を上げるには「長く寝る」だけでなく、サイクルが崩れないように整えることが重要になります。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いを一発理解
ここでは、レム睡眠とノンレム睡眠の違いを、日常の感覚に落とし込みながら整理します。
脳のはたらきの違い(整理モード vs 休息モード)
- レム睡眠:脳が比較的動いていて、日中の出来事の整理や感情の処理、記憶の定着に関わると考えられています。いわば「情報整理モード」。
- ノンレム睡眠:脳の活動が落ち着き、しっかり休むモード。いわば「休息・回復モード」。
どちらが“上”ではなく、両方がセットで必要です。
片方だけ増やすより、「両方が自然に巡る状態」を作る方が現実的で、結果的に睡眠の質が上がります。
体の状態の違い(筋肉・自律神経・心拍)
- レム睡眠:筋肉の力が抜けやすい一方で、自律神経は揺れやすく、心拍・呼吸が不規則になることがあります。夢の内容でドキッとして目が覚めることも。
- ノンレム睡眠:呼吸や心拍が安定しやすく、体全体が回復しやすい状態。深いノンレムほど起こされにくいです。
「夜中にちょこちょこ目が覚める」「寝た気がしない」場合は、レム睡眠が悪いというより、深いノンレム睡眠までスムーズに入れていない/途中で分断されている可能性が考えられます。
夢・寝言・金縛りなどが起こりやすいのはどっち?
よくある疑問を整理するとこうなります。
- 夢を見やすい:レム睡眠
- 金縛りが起こりやすい:レム睡眠の特徴(筋肉の動きが抑制される)が関係し、意識だけ先に覚醒すると起こりやすい
- 寝言・寝ぼけ行動:浅いノンレム睡眠や、その前後で起こることもあります(個人差が大きい)
ただし、金縛りが頻繁だったり、睡眠中の行動が激しい、ケガが増える、日中の強い眠気がある場合は、別の睡眠トラブルが隠れていることもあるため、無理せず専門家へ相談するのも大切です。
睡眠サイクルから見る「理想の睡眠時間」と起きるタイミング
1サイクル約90分を意識しよう
睡眠サイクルを大まかに考えると、約90分×サイクル回数で睡眠時間を組み立てるイメージが持てます。
- 90分 × 4サイクル = 約6時間
- 90分 × 5サイクル = 約7.5時間
- 90分 × 6サイクル = 約9時間
もちろん個人差はありますが、「とりあえず8時間」と決め打ちするよりも、自分がスッキリ起きられる“サイクル”を探す方がうまくいきやすいです。
深いノンレム睡眠が多いのは「寝始めの3時間」
睡眠の中でも特に重要と言われやすいのが、寝始めの数時間です。
ここで深いノンレム睡眠がまとまって出やすく、体の回復感に直結しやすいからです。
つまり、睡眠改善で効率がいいのは、
- 寝る直前の過ごし方を整えて「寝つき」を良くする
- 寝始めに途中覚醒が起こりにくい環境にする
この2つです。
「睡眠時間を増やす」より先に、まずは寝始めの質を上げることを狙いましょう。
スッキリ起きやすいのはレム睡眠に近いタイミング
同じ睡眠時間でも、起床のタイミングで体感は変わります。
- 浅い眠り(レム睡眠寄り)で起きる → 比較的スッと起きやすい
- 深いノンレムのど真ん中で起きる → 眠気やだるさが残りやすい
目覚めを良くしたい人は、次のどちらかが効果的です。
- 起床時間を固定して、体内時計を整える
- 睡眠時間を「90分単位」に近づけて試す(6時間、7.5時間など)
いきなり完璧を狙わず、数日〜1週間の単位で「起きやすさ」を観察しながら調整するのがコツです。
レム睡眠・ノンレム睡眠のバランスが崩れる原因
睡眠サイクルが乱れる原因は、特別なことよりも、日常の“よくある習慣”に潜んでいます。
寝る直前までのスマホ・PC・強い光
強い光や画面刺激は、脳を「まだ活動時間だ」と錯覚させやすく、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。
できる対策はシンプルです。
- 寝る1時間前は画面時間を減らす(難しければ30分でもOK)
- 画面の明るさを落とす/ナイトモードを使う
- ベッドにスマホを持ち込まない仕組みを作る(充電場所を寝室外にする等)
「意志」より「仕組み」で勝つのが続けるコツです。
不規則な生活リズム・昼夜逆転
寝る時間が日によって大きく変わると、体内時計が乱れて、レム・ノンレムのサイクルも安定しにくくなります。
特にやりがちなのが、
- 平日は睡眠不足 → 休日に寝だめして昼まで寝る
- 休日だけ夜更かしして、月曜がつらい
理想は「休日も平日との差を小さく」です。
難しい場合でも、まずは起きる時間を一定に近づけるだけで改善しやすくなります。
ストレス・不安・考えごとの持ち越し
ストレスや考えごとは、交感神経を優位にしてしまい、寝つきを邪魔します。
その結果、深いノンレム睡眠が出にくくなり、睡眠が浅く分断されやすくなります。
寝る前におすすめなのは「頭の中を空にする」より、「頭の中を外に出す」こと。
- 3分だけメモや日記に“気になっていること”を書き出す
- 明日のToDoを紙に書いて「明日の自分に渡す」
- ゆっくり呼吸して、体の力を抜く(後述)
思考が回って眠れない人ほど、書く・吐き出すが効きます。
カフェイン・アルコール・喫煙習慣
睡眠の質に影響しやすい代表がこの3つです。
- カフェイン:作用が長く残ることがあるため、夕方以降は控えると睡眠が安定しやすい
- アルコール:寝つきは良く見えても、後半で眠りが浅くなり、途中覚醒が増えやすい
- 喫煙:ニコチンの覚醒作用で、リラックスしにくくなる
「全部やめる」ではなく、まずは
量を減らす/時間を早めるだけでも効果が出ることがあります。
今日からできる!レム睡眠・ノンレム睡眠を整える快眠習慣
ここからは実践編です。難しいことは不要です。効果が出やすい順に整えましょう。
朝〜日中:良い睡眠は「起きた瞬間」から始まっている
夜の睡眠は、朝からもう始まっています。特に効くのはこの2つ。
- 起きたら光を浴びる(カーテンを開ける/外に出る)
- 日中に軽く体を動かす(散歩、階段、ストレッチなど)
これだけで体内時計が整いやすくなり、夜に自然な眠気が出やすくなります。
昼寝をするなら、
- 15〜20分
- 遅くとも15時まで
が目安です。長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の寝つきを悪くすることがあります。
夕方〜夜:深いノンレム睡眠を引き出す準備
寝始めの質を上げる準備としておすすめなのは、
- 夕方以降のカフェインを控える
- 夕食は寝る2〜3時間前までに
- 寝る直前の激しい運動は避ける(軽いストレッチはOK)
さらに強力なのが入浴です。
- 38〜40℃のぬるめで10〜15分
- 入浴後、体温がゆるやかに下がるタイミングで眠気が来やすい
「寝つきが悪い人」は、まず入浴の習慣化が当たりになりやすいです。
寝る前1時間の「スマホ断ち」とリラックスタイム
寝る前は“眠るための儀式”を作ると強いです。おすすめは以下のどれか一つでOK。
- スマホを置いて、紙の本を数ページ読む
- 3分だけ日記(または不安の書き出し)
- 呼吸法(吐く息を長くする)
- 軽いストレッチ(痛くない範囲)
呼吸法の例(簡単で効果的):
- 鼻から吸って(4秒)
- 口からゆっくり吐く(6〜8秒)
- これを2〜3分
ポイントは「吸う」より「吐く」を長く。副交感神経が働きやすくなります。
起きたときの対応:夜中に目が覚めても慌てないコツ
夜中に目が覚めるのは、誰にでもある自然なことです。大事なのは、その後の行動。
- 時計を見ない(焦りが強くなる)
- スマホを見ない(覚醒する)
- 「眠れない」を問題にしない(緊張が増える)
再入眠のコツは「考えること」を減らし、「体感」に戻すことです。
- 呼吸に意識を戻す
- 体の力が入っている場所(肩、あご、手)をゆるめる
- 「横になっているだけでも休めている」と捉える
焦りが減るだけで、睡眠は戻りやすくなります。
よくある質問Q&A(レム睡眠・ノンレム睡眠編)
Q1:レム睡眠だけ/ノンレム睡眠だけ増やせますか?
基本的に、睡眠はレムとノンレムがサイクルで巡るため、片方だけを狙って増やすのは難しいです。
現実的には、生活リズムと寝る前の過ごし方を整えて、サイクル全体を安定させるのが最短ルートです。
Q2:夢をよく見るのは睡眠が浅い証拠?
夢をよく“覚えている”のは、レム睡眠中〜直後に目覚めた可能性が高いだけのことも多いです。
ただし、悪夢が続く、途中覚醒が多い、日中の眠気が強い場合は、ストレスや睡眠の分断が影響していることもあるので、生活習慣の見直しを優先しましょう。
Q3:ショートスリーパーはレム睡眠・ノンレム睡眠が特別なんですか?
生まれつき睡眠が短くても支障がない人はごく少数とされます。
多くの場合は「短くても頑張れているだけ」で、疲労や集中力低下が蓄積していることがあります。
日中の眠気、気分、集中力、体調を含めて、睡眠を評価するのがおすすめです。
Q4:睡眠アプリの「深い睡眠」の表示はどこまで信じていい?
多くのアプリやデバイスは、体動や心拍から睡眠状態を“推定”しています。医療検査ほど正確ではありません。
使い方のコツは、数字の正確さを追うより、「生活改善で傾向が変わったか」を見ること。
一喜一憂しすぎず、体感(朝のスッキリ感)とセットで判断しましょう。
まとめ|レム睡眠とノンレム睡眠を味方につけて、毎日を元気に過ごそう
レム睡眠とノンレム睡眠は、どちらも欠かせない睡眠の要素です。
- 睡眠は、レム睡眠(浅い)とノンレム睡眠(深い)がサイクルで巡る
- 前半はノンレム多め、後半はレム多めになりやすい
- 特に重要なのは、寝始めの数時間の質(深いノンレムを出しやすくする)
- 寝る前のスマホ、生活リズムの乱れ、ストレス、カフェインやアルコールがサイクルを崩しやすい
- 改善の近道は「朝の光」「日中の活動」「寝る前のリラックス習慣」
まずは今日から、次のどちらか1つだけやってみてください。
- 朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる
- 寝る前30分だけスマホを見ない
それだけでも、睡眠サイクルは整いはじめます。
※強い日中の眠気が続く、いびきや呼吸停止を指摘される、睡眠中の異常行動が多いなどの場合は、睡眠時無呼吸症候群など別の原因が関係することもあるため、医療機関への相談も検討してください。


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