PR

高齢者が水分を摂らない理由|1番はトイレ、のどの渇きは3番目

医療・介護
記事内に広告が含まれています。

「お母さんが、水をほとんど飲まないんです」

ご家族からそう聞くことがあります。調べると「のどの渇きを感じにくくなるから」と書かれていることが多いと思います。

それは正しいのですが、現場で理由をたずねると、返ってくる順番が違いました。

この記事で伝えたいこと

・いちばん多い理由は「トイレが近くなるから」でした
・次が「暑くないから」、その次が「のどが渇いてないから」です
・🔸 のどの渇きの話は、3番目でした
・だから「飲みましょう」より先に、トイレの不安を外すほうが進みます
・「暑くない」には、室温計の数字を見せるのが効きました

⚠️ 脱水は、進むと命に関わります。ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い、食事がとれていないといったときは、様子を見ずに主治医やかかりつけ医にご相談ください。この記事は、受診の判断に代わるものではありません。

上位に書かれている説明は、正しいです

年齢とともに、のどの渇きを感じる働きは鈍くなっていきます。体の中の水分の割合も下がります。

つまり「渇いたら飲む」という仕組みが、当てにならなくなっていきます。

ここまでは、どのサイトにも書かれているとおりです。問題は、そのあとです。

のどの渇きを感じにくい
 ↓
だから「こまめに飲みましょう」と声をかける
 ↓
それでも飲まない

ここで止まってしまうことが、とても多いのです。

現場でたずねると、理由の順番はこうでした

実際に「どうして飲まないんですか」と聞いたときに返ってきた答えを、多い順に並べるとこうなります。

順番 返ってきた答え
1番 トイレが近くなるから
2番 暑くないから
3番 のどが渇いてないから

多くの記事が1番に挙げる「のどの渇き」は、現場では3番目でした。

順番が違うと、打つ手も変わります。3番目の理由に向けた声かけをしていても、1番目が残っているかぎり動きません。

1番「トイレが近くなるから」は、筋の通った判断です

ここを「困った思い込み」として扱わないほうがいい、と考えています。

控えるのには、理由があります

・夜中に何度も起きるのがつらい
・暗い中をトイレまで歩くのが不安
・間に合わなかったことがある
・人の手を借りるのが申し訳ない

夜中にトイレに起きること自体が、転ぶきっかけになります。暗くて、寝起きで、急いでいて、たいてい裸足です。

そう考えると、「水を控える」という判断は、本人なりに筋が通っています。

⚠️ 「飲まないと体に悪いですよ」と正しさで押すと、本人が困っていることには触れないままになります。これでは進みません。

量ではなく、時間をずらす

トイレの不安が理由なら、減らすのではなく、飲む時間を前にずらすという方向があります。

・朝から夕方までに、多めに飲む
・夕食後から寝るまでは、控えめにする
・1日の合計は変えない

「夜中に起きたくない」という本人の目的と、水分をとることは、この形なら両立します。

夜間のトイレが主な困りごとになっている場合は、原因がいくつかに分かれます。そちらは別の記事にまとめました。

2番「暑くないから」には、室温計を見せました

ここが、いちばんお伝えしたいところです。

説得ではなく、数字を渡す

夏の暑い時期に、高齢の方が「今日は暑くない」とおっしゃることがあります。暑さを感じにくくなっているためです。

このとき、「いや、今日は暑いですよ」と言っても、本人の感覚とぶつかるだけです。

そこで、室温計を持っていって、数字を見てもらいました。

やったこと

・部屋に室温計を置く
・数字を一緒に見る
・「今、この部屋は◯度です」と事実だけ伝える

これで、水分をとってもらえるようになった方がいます。

やっていることは、説得ではありません。本人の感覚が当てにならない部分を、数字で補っただけです。

なぜ、声かけより通りやすいのか

「飲んでください」は、お願いです。相手に判断をゆだねていません。

室温計の数字は、判断の材料です。見て、自分で決められます。

感覚が当てにならないなら、感覚に訴えるのをやめて、数字を見せる。

同じ考え方は、飲んだ量にも使えます。その日に飲んだぶんを、目に見える形にしておくと分かりやすくなります。

・朝、やかんやボトルに1日ぶんを用意しておく
・減り具合で、飲めているかが見える
・「あとどれくらい」が本人にも分かる

⚠️ 室温計が全員に効くわけではありません。そのとき、その方には効いた、という話です。

3番「のどが渇いてないから」は、時間で決める

ここでようやく、よく言われている話になります。

渇きを感じにくいのであれば、渇いたかどうかを合図にしないほうが確実です。

合図を、のどから生活に移す

・起きたとき
・食事のとき
・お風呂の前と後
・寝る前(夜のトイレが気になる方は少なめに)

もともとある生活の区切りに結びつけると、覚えなくて済みます。

⚠️ 一度にたくさん飲むと、むせることがあります。とくに飲み込む力が落ちている方は、少しずつ、姿勢を整えてからにしてください。座ったときに足が床に着いているかどうかでも、飲み込みやすさは変わります。

それでも、飲んでもらえないことがあります

正直に書きます。

必要性をお伝えしても、本人がそう感じなかった場合は、結局とってもらえませんでした。

室温計を見ても、時間を決めても、動かない方はいます。そこを無理に動かそうとすると、関係のほうが先に壊れます。

できること
・水だけにこだわらない(食事、汁物、果物にも水分はあります)
・本人が好きな飲み物にする
・毎日言わない。暑い日だけに絞る

⚠️ 食事の量まで落ちているときは、水分だけの話ではなくなっています。その場合は、早めに医療職にご相談ください。

自分が「脱水」と言われたときの話

高齢の方の話ばかりしてきましたが、私自身も言われたことがあります。

フルマラソンを走った翌日に、健康診断で採血をしたときのことです。

「血がドロドロですね。脱水だと思います」

自分ではまったく自覚がありませんでした。のども渇いていませんでしたし、体調が悪いとも感じていませんでした。

年齢に関係なく、汗をかいたあとは、自覚のないまま水分が足りなくなることがあるのだと思います。

この経験があるので、「のどが渇いていないから大丈夫」という言葉は、自分のこととしても聞いています。

こんなときは、様子を見ずに相談を

⚠️ 次のような様子があるときは、水分の工夫で粘らず、医療機関に連絡してください。

・ぐったりしている、起き上がれない
・呼びかけへの反応が鈍い、いつもと様子が違う
・水分も食事もとれていない日が続いている
・発熱、嘔吐、下痢がある
・尿がほとんど出ていない
・立ったときに強くふらつく

持病がある方や、お薬を飲んでいる方は、水分のとり方について主治医の指示が優先です。心臓や腎臓の状態によっては、量を制限されていることがあります。

よくある質問

Q1 1日にどれくらい飲めばいいですか

飲み物からとる量の目安として、1,000〜1,500ml前後とされていることが多いです。ただし体格や持病、季節、食事の内容で変わります。

制限を受けている方は、その指示が優先です。まずは主治医にご確認ください。

Q2 お茶やコーヒーでもいいですか

水分にはなります。ただしカフェインを含むものは、尿が近くなると感じる方がいます。トイレの不安が理由で控えている方には、かえって逆向きに働くことがあります。

夕方以降は、カフェインの入っていないものに替えるほうが続きやすいと思います。

Q3 「飲んで」と言い続けるのは、よくないのでしょうか

悪いことではありませんが、毎日言っていると、お互いに疲れます。

言う日を、暑い日に絞るほうが届きやすいように思います。そのためにも、室温計のような分かりやすい目印があると助かります。

Q4 本人が「大丈夫」と言い張ります

言い合いになりそうなときは、正しさを競うのをいったんやめて、数字を一緒に見てみてください。

室温計でも、その日に減ったボトルの量でも構いません。判断の材料を渡すと、相手が自分で決められます。

まとめ

・飲まない理由の1番はトイレ。のどの渇きは3番目でした
・トイレが理由なら、量を減らさず、時間を前にずらす
・「暑くない」には、室温計の数字を一緒に見る
・渇きが合図にならないなら、生活の区切りで決める
・それでも飲まない方はいます。暑い日に絞って伝える
・⚠️ ぐったりしている、反応が鈍いときはすぐ相談を

「のどの渇きを感じにくくなる」は、本当のことです。ただ、それを知っているだけでは、目の前の方は飲んでくれません。

先に外すのは、トイレの不安のほうでした。

プロフィール

よこコーチ

理学療法士 / 銀座コーチングスクール認定コーチ

病院9年→クリニック2年→訪問リハビリ2年と、理学療法士として現場で多くの患者さんと向き合ってきました。
その経験をもとに、日常で取り組める健康習慣を発信しています。

👉 詳しいプロフィールはこちら

医療系免責文
【ご注意】
本記事は理学療法士としての知識・経験に基づく一般的な健康情報の提供を目的としており、医学的な診断・治療・処方に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師または医療専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、当ブログは一切の責任を負いかねます。
医療・介護