「階段が上れなくなってきた」
ご家族からそう聞いたとき、何が起きているのか分かりにくいと思います。
調べると「筋力の低下」「ロコモ」と書かれていることが多いですが、それだけでは何をすればいいのか見えてきません。
この記事で伝えたいこと
・「危ない」のは下り。でも「できなくなる」のは上りです
・上りは力で体を持ち上げる動作だからです
・🔸 階段を使わなくても、見分けられます
・玄関の上がり框と椅子からの立ち上がりで確認できます
⚠️ 階段は、転落すると大きな怪我につながります。無理に試さないでください。不安がある場合は、主治医やケアマネジャー、担当の理学療法士にご相談ください。
「危ない」のは下り、「できなくなる」のは上り
下りが危ないのは、そのとおりです
「階段は降りるときのほうが危険」——これはよく言われますし、正しいです。
・前のめりの姿勢になる
・足元が見えにくい
・踏み外すと、そのまま下まで落ちる
転落したときの被害は、下りのほうが大きいです。
ただ、困りごとが多いのは「上り」です
見てきた中では、上りで困る方のほうが多かったように思います。
理由はシンプルです。
上りは、自分の体重を、力で持ち上げる動作だからです。
片足で全体重を支えて、膝を伸ばして、体を一段ぶん押し上げる。これを何度も繰り返します。
下りは、重力に逆らいません。支えながら下ろすので、必要な力は上りより小さくて済みます。
下り 危険度が高い。転落すると大怪我につながる
上り 力が要る。先に「できなくなる」のはこちら
どちらも大事ですが、意味が違います。「下りが危ない」という話だけを聞いていると、上りができなくなっていることを見落とします。
階段を使わなくても、見分けられます
ここがお伝えしたいところです。
階段で試すのは危険です。でも、同じ力が要る動作が、家の中にあります。
① 玄関の上がり框を上れますか
玄関の段差(上がり框)は、15〜20cm程度のことが多いです。階段一段とほぼ同じ高さです。
・何にもつかまらずに、上がれますか
・足を上げるとき、ふらつきませんか
・何度か失敗していませんか
ここで苦労しているなら、階段も同じか、それ以上に大変なはずです。
② 椅子から、手の支えなしで立てますか
もうひとつが、椅子からの立ち上がりです。
階段を上るとき、片足で体を押し上げます。椅子からの立ち上がりも、同じように脚の力で体を持ち上げる動作です。
・肘掛けや膝に手をつかずに立てますか
・立つときに、勢いをつけていませんか
・一度で立てますか
⚠️ 手をついて立っているなら、それは「腕で補っている」状態です。階段では、腕で補うことができません(手すりがなければ)。
この2つができていれば
いまのところ、階段の上りに必要な力は保たれていると考えられます。
逆に、どちらかで苦労しているなら、階段はすでに負担になっている可能性があります。
「上れない」の中身を分けてみてください
ひとことで「上れない」と言っても、中身はいろいろです。
・手すりがあれば上れるが、なしだと上れない
→ 力そのものより、バランスの問題であることが多いです
・ふらつく
→ バランス。⚠️ めまいや薬の影響のこともあります
・一段ずつなら上れる
→ 片足で体を支える時間が長くなると難しい状態
・途中で休まないと上れない
→ 筋力より心肺機能の問題かもしれません
・怖くて使っていない
→ ⚠️ 「できない」のではなく「やらない」状態。意味が違います
どれに当てはまるかで、相談先も対処も変わります。
⚠️ とくに「息が切れる」「胸が苦しい」場合は、筋力の問題ではない可能性があります。早めに医療機関へご相談ください。
手すりで変わることがあります
「手すりがあれば上れる」という方は、少なくありません。
実際、手すりを設置して環境が変わった方を見てきました。
手すりは、体を引き上げるためだけのものではありません。つかまることで体が安定し、ふらつきが減ります。
・片側だけでも効果があります
・⚠️ どちら側につけるかは、その方の状態によります
・階段の形(直線・折れ曲がり)でも変わります
🔸 設置する位置や高さは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、担当の理学療法士に見てもらってください。合わない位置につけると、かえって使いにくくなります。
🔗 手すりの話は、こちらにまとめました
⚠️ 無理に上らせないでください
「鍛えれば上れるようになる」と考えて、毎日階段を往復させる——これはおすすめしません。
階段は転落のリスクがある場所です。練習の場としては、危険が大きすぎます。
脚の力をつけたいなら、安全な場所でやってください。
椅子からの立ち座りを繰り返す。かかとの上げ下げをする。こうした運動のほうが、同じ筋肉を安全に使えます。
⚠️ 膝や腰に痛みがある場合、自己流の運動は悪化させることがあります。医師や理学療法士に相談してから始めてください。
生活のほうを変える方法もあります
階段が上れなくなったとき、「上れるようにする」以外の選択もあります。
・よく使うものを1階に移す(寝室・トイレの動線を見直す)
・1階だけで生活が完結するようにする
・手すりの設置を検討する
・階段昇降機やホームエレベーターを検討する(費用はかかります)
⚠️ 「上れないなら2階に行かなければいい」は、消極的な選択に見えるかもしれません。
ただ、無理に上って転落するより、よほど安全です。そして1階で生活が完結すれば、本人の負担も減ります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 階段で練習すれば、上れるようになりますか?
A. ⚠️ 階段での練習はおすすめしません。転落のリスクが大きすぎます。同じ筋肉は、椅子からの立ち座りやかかとの上げ下げで、安全に使えます。⚠️ 痛みがある場合は、医師や理学療法士に相談してから始めてください。
Q2. 上りと下り、どちらを先に気にすべきですか?
A. 危険という意味では下り、変化のサインという意味では上りです。下りは転落すれば大怪我になります。一方、上りは先にできなくなるので、体の変化に早く気づけます。
Q3. 手すりは両側につけたほうがいいですか?
A. 片側だけでも効果はあります。どちら側につけるかは、その方の状態(どちらの脚が弱いか、どちら向きに上るか)によります。🔸 自己判断せず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に見てもらってください。
Q4. 息切れするのは、体力が落ちたからですか?
A. ⚠️ それだけとは限りません。心臓や肺の病気が隠れていることがあります。以前より明らかに息切れしやすくなった、胸が苦しい、むくみがある——こうした場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q5. 怖がって階段を使わなくなりました。
A. 「できない」のと「やらない」のは別です。怖さから避けているうちに、本当にできなくなることもあります。⚠️ ただし無理に使わせないでください。一度転ぶと、恐怖はさらに強くなります。まず玄関の段差や椅子からの立ち上がりで、いまの力を確認してみてください。
まとめ
・「危ない」のは下り、「できなくなる」のは上り
・上りは自分の体重を力で持ち上げる動作だから
・🔸 確認は、玄関の上がり框と、椅子からの立ち上がりで
・「上れない」の中身を分ける(手すり/ふらつき/一段ずつ/息切れ/怖い)
・手すりで変わることがあります。位置は専門職に見てもらう
・⚠️ 階段で練習しない。椅子の立ち座りのほうが安全
・⚠️ 息切れ・胸の苦しさは、医療機関へ
階段を上るところを見るのは、こわいと思います。
玄関の段差と、椅子から立つところ。まずはそこを見てみてください。

