「最近、あまり食べないんです」
ご家族からそう聞くことがあります。調べると、原因がずらりと出てきます。飲み込む力、味やにおいの変化、薬の影響、持病、義歯。
どれも正しい説明です。ただ、そのあとに困ることがあります。食べていない日に、体を動かしていいのかどうかです。
この記事で伝えたいこと
・リハビリでは、まず「朝ごはんを食べたか」を聞いていました
・🔸 食べていない日は、運動の量を減らしていました
・食事量と運動量は、セットで考えます
・⚠️ 「動けば食欲が出る」とは、言い切れません
・⚠️ 急に食べなくなったときは、工夫より先に受診です
⚠️ 食欲が落ちることは、病気のサインであることがあります。急に食べなくなった、体重が短期間で減った、熱が続いているといったときは、生活の工夫で様子を見ずに医療機関を受診してください。この記事は受診の判断に代わるものではありません。
原因のリストは、もう出揃っています
食欲が落ちる理由については、公的な研究機関や医師が、すでに整理したものを出しています。
・飲み込む力や噛む力の変化
・味やにおいの感じ方の変化
・薬の影響
・胃腸や、ほかの病気
・義歯が合っていない
・便秘
・気持ちの落ち込み
原因を知りたい場合は、そちらを読むほうが確かです。私が書けるのは、別のところです。
食べていない人を前にして、その日どう動かすかを決める。そこがリハビリの仕事でした。
まず「朝ごはんを食べたか」を聞いていました
リハビリを始める前に、必ず確認していたことのひとつです。
なぜ朝ごはんなのか
リハビリは午前中に入ることが多く、その日に体を動かすためのエネルギーが入っているかどうかが、朝ごはんで決まります。
食べていない状態で動かすと、ふらついたり、途中で気分が悪くなったりすることがあります。
体重も見ていました
一日の食事量は、聞いても正確には分かりません。本人も家族も、覚えていないことが多いからです。
そこで体重を見ます。食べられているかどうかは、数字のほうが正直です。
体重で見るときのコツ
・同じ時間、同じ服装で測る
・毎日でなくても、週に1〜2回で足ります
・1日の増減ではなく、何週間かの流れを見る
・⚠️ 短い期間ではっきり減っているときは、受診の対象です
体重を記録しておくと、医療機関に相談するときにも役に立ちます。「なんとなく痩せた気がする」より、はるかに伝わります。
食べていない日は、運動の量を減らしていました
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
朝ごはんを食べていない、ここ数日あまり食べていない。そういう日は、その日の運動量を調整していました。
「動けば食欲が出る」は、いつでも正しいわけではありません
よく言われることですし、実際に動くようになって食べるようになった方もいたように思います。
ただ、いつでもそうなるとは言えません。食べていない状態で動かせば、足りないところからさらに使うことになります。
入ってきていないときに、出すほうを増やさない。
食事量と運動量は、セットで考えます
リハビリの世界には、栄養と運動をセットで考えるという見方があります。運動だけを増やしても、材料がなければ体は作られません。
よく食べている時期 → 動く量を増やしてよい
あまり食べていない時期 → いまの力を保つところまでにする
ほとんど食べていない → 運動より先に、食べられない理由を調べる
「頑張って動かせば良くなる」は、食べられているときの話です。
食べていないと、リハビリが進まないことがあります
食事量が落ちたまま続くと、筋肉が落ちていきます。そうなると、同じ運動をしても思うように戻りません。
こうした状態を指す言葉として、フレイルやサルコペニアがあります。
フレイル 年齢とともに心身の力が弱まり、介護が必要になりやすい状態
サルコペニア 筋肉の量と力が落ちた状態
⚠️ どちらも、自分で判断するものではありません。気になるときは、かかりつけ医やリハビリの担当者に相談してください。
見てきた中でも、食べられていない方は、リハビリが思うように進まないことがありました。そのときに必要なのは、運動を増やすことではなく、食べられない理由のほうを先に探すことです。
家でできること
① 朝ごはんを食べたかを、聞くだけ
一日の食事量を正確に把握するのは難しいですが、朝ごはんを食べたかどうかなら、その場で分かります。
「朝、何か食べた?」の一言で足ります。食べていない日が続くなら、それが相談すべき変化です。
② 体重を、週に1〜2回測る
毎日でなくて構いません。同じ時間、同じ服装で。紙でもスマホのメモでも、残しておいてください。
③ 動く量を、その日に合わせる
食べられていない日に、散歩の距離を伸ばさない。それだけで十分です。
やめてしまう必要はありません。座ってできる体操や、立ち座りを数回など、いまの力を保つところまでにしておきます。
④ 食べやすさを邪魔していないか見る
姿勢や、口の中の状態で、食べにくくなっていることがあります。椅子に座ったとき、足の裏が床に着いているかどうかでも、飲み込みやすさは変わります。
⚠️ 食事中にむせることが増えているときは、工夫で粘らず相談してください。誤嚥は肺炎につながることがあります。
こんなときは、様子を見ずに受診を
⚠️ 次のような場合は、生活の工夫で粘らず医療機関を受診してください。
・急に食べなくなった
・短い期間で、はっきり体重が減った
・水分もとれていない
・熱がある、ぐったりしている
・食べるとむせる、飲み込みにくい
・吐き気、腹痛、便が出ていない
・口の中に痛みがある、義歯が合っていない
・新しい薬を飲み始めてから食べなくなった
とくに「急に」は大事なしるしです。ゆっくり減ってきたのか、ある日から急に食べなくなったのかで、考えることが変わります。
よくある質問
Q1 食べないなら、せめて運動させたほうがいいですか
逆の順番になりがちなところです。食べられていないときに運動量を増やすと、体力を使うばかりになることがあります。
やめる必要はありませんが、増やすのは、食べられるようになってからです。
Q2 好きなものだけ食べさせてもいいですか
まったく食べない状態が続くよりは、食べられるものから、という考え方はあります。
ただし、持病で制限を受けている方は別です。主治医の指示が優先されます。
Q3 どれくらい様子を見ていいですか
日数で言い切れるものではありません。ただ、「急に」「水分もとれていない」「体重が減っている」のどれかが当てはまるなら、様子は見ないでください。
Q4 栄養のことは、誰に相談すればいいですか
まずはかかりつけ医です。必要に応じて、管理栄養士や歯科につないでもらえます。
介護保険のサービスを使っている場合は、ケアマネジャーに伝えておくと、関係者に共有されます。
まとめ
・原因のリストは、すでに公的機関と医師が出しています
・🔸 リハビリでは、まず「朝ごはんを食べたか」を聞いていました
・一日の食事量は分からないので、体重で見ます(週1〜2回)
・食べていない日は、運動量を減らす
・⚠️ 「動けば食欲が出る」とは言い切れません
・増やすのは、食べられるようになってから
・⚠️ 「急に」食べなくなったときは、工夫より先に受診
食べることと動くことは、別々の話に見えて、つながっています。
どちらか一方だけを頑張っても、うまくいきません。
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