「生きがいって、どうやって見つけるんだろう」
「やりたいことが、特にない」
「毎日は回っているけれど、なんとなく物足りない」
そう感じたことはありませんか。
私は理学療法士として13年間、病院・クリニック・訪問リハビリの現場で、多くの方の生活に関わってきました。あわせて、コーチとしても人の「ありたい姿」に向き合っています。
その両方から見えてきたのは、生きがいは「見つける」ものというより、「気づく」ものだということです。
そして多くの人が、すでに持っているのに気づいていない——そういう場面を、何度も見てきました。
【この記事でわかること】
✅ 有名な「4つの円」の図に、足りていないもの
✅ リハビリの現場で聞いた、生きがいのリアルな中身
✅ 「ありたい姿」を聞くと、なぜ「やりたいこと」が返ってくるのか
✅ 今日からできる、生きがいに気づく3つの問い
「生きがい」を調べると、まずあの図が出てくる
「生きがい 見つけ方」で検索すると、多くの場合、4つの円が重なった図に出会います。
4つの円は、それぞれこう書かれています。
- 好きなこと
- 得意なこと
- 世の中が必要としていること
- お金になること
この4つが重なるところが「生きがい」だ——という図です。ikigai という日本語がそのまま世界に広がり、多くの国で知られる言葉になりました。日本発の言葉が、こうして海を渡っているのは素直にうれしいことです。
図としてもよくできています。頭の中を整理する入口としては、十分に役に立ちます。
ただ、この図を見るたびに、私には引っかかることがあります。
「お金になること」が、入っていることです。
現場で聞いた「〇〇がしたい」に、お金の話は出てこない
訪問リハビリの現場では、初回に必ずお聞きすることがあります。
「これができるようになったら、と思うことはありますか」
返ってくる答えを、思い出せるだけ並べてみます。
・自分の足でトイレに行きたい
・お風呂に入れるようになりたい
・家のことで、自分にできることは自分でやりたい
・外を歩けるようになりたい(買い物に行きたい)
・庭いじりをしたい
・姿勢を良くして、歩きやすくなりたい
・痛みなく生活したい
・杖なしで歩けるようになりたい
・電車やバスに乗って、友人に会いに行きたい
・仕事に戻りたい
お気づきでしょうか。
「お金になること」は、ひとつも出てきません。
それどころか、「好きなこと」でも「得意なこと」でもありません。「世の中が必要としていること」でもない。
ただ、「したいこと」です。
あの4つの円のどこにも入らない願いが、現場にはあふれています。そして、それを語るときの表情は、どんな目標設定の場面よりも真剣です。
理学療法士の視点|生きがいは「大きな目的」ではなかった
「生きがい」という言葉には、どこか壮大な響きがあります。天職、使命、人生の目的——そういうものを探さなければいけない気がしてきます。
けれど現場で聞いてきた願いは、驚くほど日常的でした。
たとえば「自分の足でトイレに行きたい」。
これを「小さな願い」と感じる方もいるかもしれません。でも、その方にとっては違います。トイレに自分で行けるかどうかは、誰かの手を借りずに一日を過ごせるかどうかそのものです。
庭いじりをしたい、という方もいました。この願いの奥にあるのは、おそらく「土をいじること」だけではありません。何かを育てていたい。季節を感じていたい。そういうものが含まれています。
仕事に戻りたい、という方もいます。収入のためだけではありません。社会とのつながりを手放したくない——そう言葉にされた方もいました。
生きがいは、遠くにあるものではなかった。すでにその人の生活の中にあって、失いかけたときに初めて姿を現す。そう感じています。
コーチの視点|「ありたい姿は?」と聞くと、みんな「やりたいこと」を答える
コーチングでは、「ありたい姿」を扱うことがあります。英語で言えば being、どういう自分でいたいか、という問いです。
ところが実際に聞いてみると、返ってくるのはほとんどが doing——やりたいことです。
「どういう自分でありたいですか?」
→「資格を取りたい」「独立したい」「痩せたい」
これは、誰かがおかしいわけではありません。人間はそういうふうにできているのだと思います。
正直に言えば、私自身も最初はそうでしたし、今でも being より doing のほうが先に出てきます。コーチとして人に問いかける立場になった今でも、自分に向けると同じです。
だから私は、doing で答えが返ってきても、それを直そうとはしません。
doing は入口です。その奥に being があります。
「見つける」のではなく「気づく」
ここまでの2つが、実はつながります。
リハビリの現場で出てくる「トイレに行きたい」「庭いじりがしたい」も、全部 doing です。でもその奥には、こういうものが隠れています。
「自分の足でトイレに行きたい」
→ 人の世話にならずにいたい / 自分のことは自分で決めていたい
「庭いじりをしたい」
→ 何かを育てていたい / 季節とともに暮らしたい
「友人に会いに行きたい」
→ 人とのつながりの中にいたい
これが being です。ありたい姿は、やりたいことの奥に、すでにあります。
だから「生きがいを見つけよう」と、ゼロから探しに行く必要はありません。いま自分が「〜したい」と思っていることを、一段深く見るだけでいいのです。
今日からできる、生きがいに気づく3つの問い
問い1|「〜したい」を、10個書き出す
大きなことでなくて構いません。むしろ小さいほうがいいくらいです。
「もう一度あの店のコーヒーが飲みたい」「休みの日に何もしない時間がほしい」——そのレベルで大丈夫です。10個埋まらなくても構いません。出てきた分だけで進めます。
問い2|「それができたら、どんな自分でいられる?」と聞く
書き出したうちの1つを選んで、自分に聞いてみてください。
コーヒーを飲みたい、の奥には何があるでしょう。ひとりの時間を持っていたい、かもしれません。誰にも急かされずにいたい、かもしれません。
その答えのほうが、あなたの「ありたい姿」に近いはずです。
問い3|「お金にならなくても、続けたいか?」と確かめる
最後に、この問いを通してみてください。
お金にならなくても続けたいなら、それは間違いなくあなたの生きがいです。4つの円の「お金になること」は、なくても成り立ちます。
逆に、この問いで消えてしまうものもあります。それは生きがいではなく、目標だったのかもしれません。どちらが良い悪いではなく、区別がつくだけで、扱い方が変わります。
もっと深めたい人へ
「生きがい」をもう少し広い視野で考えたい方に、2冊ご紹介します。
世界が「ikigai」を知った本
IKIGAI シンプルに、豊かに生きる
エクトル・ガルシア/フランセスク・ミラージェス(PHP研究所)
冒頭でふれた4つの円も出てきますが、この本の値打ちは、そこではないと思います。
著者たちが実際に沖縄・大宜味村へ行き、100歳を超えた方々に「なぜ元気なのか」を聞いて回った取材の部分です。そこで語られる言葉は、この記事に並べた「〇〇がしたい」と、驚くほど似ています。
枠組みではなく、自分を耕したい人に
道をひらく
松下幸之助(PHP研究所)
こちらには図も枠組みもありません。短い文章が並んでいるだけです。
だからこそ、読み手が自分に問い直すタイプの本です。1日1篇ずつ読むような付き合い方が向いています。答えをくれる本ではなく、問いを置いていく本です。
まとめ
- 有名な「4つの円」は入口としては便利。ただし「お金になること」は、生きがいの必須条件ではない
- 現場で聞く「〇〇がしたい」は、トイレ・お風呂・庭いじりなど驚くほど日常的。お金の話は出てこない
- 「ありたい姿(being)」を聞くと、返ってくるのは「やりたいこと(doing)」。それでいい。doing は入口
- 生きがいは探しに行くものではなく、すでにある「〜したい」の奥にある
- 3つの問い——①10個書き出す ②「どんな自分でいられる?」と聞く ③「お金にならなくても続けたいか?」
最後に、私自身のことも書いておきます。この記事を書いておいて自分が答えないのは、ずるいと思うので。
私の生きがいは、一度きりの人生を、誰よりも楽しむことです。
これも、たどり着くまでに時間がかかりました。最初はずっと doing で考えていましたから。
よくある質問(Q&A)
Q1. 「〜したい」が1つも思い浮かびません。
A. 疲れているときは、本当に何も出てきません。それは異常ではありません。
そういうときは「したいこと」ではなく「したくないこと」から書いてみてください。裏返すと、ありたい姿が見えることがあります。
Q2. 生きがいは、仕事でなければいけませんか?
A. まったくその必要はありません。
この記事で挙げた例のほとんどは、仕事とは無関係です。生きがいと収入を結びつけて考えると、かえって見えにくくなります。
Q3. 見つけた生きがいは、変わってもいいのでしょうか?
A. 変わります。むしろ変わるほうが自然です。
体の状態、家族の状況、年齢——前提が変われば「〜したい」も変わります。変わったこと自体が、生きている証拠だと考えています。
Q4. 家族の生きがいを見つけてあげたいのですが。
A. 見つけてあげることはできませんが、問いかけることはできます。
「何がしたい?」より「これができるようになったら、と思うことはある?」のほうが、答えが出やすいと感じています。
Q5. 気持ちが落ち込んでいて、何も考えられないときは?
A. 無理に考えないでください。
眠れない、食べられない、以前は楽しめたことが楽しめない——こうした状態が2週間以上続くときは、ご自身で解決しようとせず、医療機関にご相談ください。
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