「来週、退院になります」
そう言われたあと、ご家族からいちばん多く聞かれたのが、この質問でした。
「家では、どこまでさせていいんでしょうか」
調べると「無理をさせない」「見守る」「手すりをつける」と出てきます。間違ってはいないのですが、これでは判断できません。
この記事で伝えたいこと
・「どこまで」は言葉では決まりません
・🔸 退院前に、リハビリを見学させてもらってください
・実際の動きを見てから、すり合わせるのがいちばん早いです
・住まいの整備は、退院を待たずに先に始めます
・家に帰って良くなる方もいます
⚠️ どこまで動いてよいかの最終的な判断は、主治医と担当の理学療法士のものです。骨折の部位や手術の方法によって、体重をかけてよい範囲が決まっていることがあります。この記事は、その確認のしかたについての話です。
「どこまでさせていいか」は、言葉では決まりません
たとえば「トイレは自分で行けます」と言われたとします。これだけでは、家でどうすればいいか分かりません。
・立ち上がるとき、何かにつかまっているのか
・歩くときに、ふらついていないのか
・ズボンの上げ下ろしは、立ったままできるのか
・そばに人がいる前提なのか、いなくてもいいのか
同じ「できる」でも、中身がまったく違います。
言葉で伝えようとすると、どうしても抜け落ちます。だから、見てもらうのがいちばん早いのです。
退院前に、リハビリを見学させてもらってください
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
退院が決まる前後で、ご家族にリハビリを見学してもらうことがありました。そのうえで、家での過ごし方をすり合わせます。
何を見るのか
説明を聞くためではありません。動いているところを見るためです。
見てほしいところ
・椅子やベッドから立ち上がる瞬間
・歩き出しの一歩目と、方向を変えるとき
・どこに手をついているか
・付き添っている人の手が、どれくらい添えられているか
・疲れてきたときに、何が崩れるか
とくに「手」を見てください。支える手がどこにあるかで、家で必要なものが見えてきます。
見たあとに、すり合わせる
見学のあとに話すと、話が具体的になります。
「さっきの立ち上がりは、家の椅子だとどうでしょう」「あの高さの段差は、玄関にもありますか」。同じ場面を見たあとなので、言葉が通じます。
このとき、遠慮せずに聞いてください。いちばん聞きにくいのは、たいていこれです。
・目を離してもいい時間はどれくらいか
・夜中のトイレは、どうするのがいいか
・お風呂は、いつから、どういう形でか
・やってはいけない動きはあるか
⚠️ 見学できるかは、病院によります
すべての病院で、いつでも見られるわけではありません。感染対策や病棟の決まりもあります。
断られることもありますが、聞いてみる価値はあります。難しい場合でも、退院前の面談や、動画で見せてもらえることがあります。
住まいの整備は、退院を待たずに始めます
これは、はっきりお伝えしていました。退院してから考えるのでは、間に合いません。
手すりをつけるにも、介護保険を使うにも、申請と工事に時間がかかります。
先に動いておくこと
・担当のソーシャルワーカーに相談する(病院にいます)
・介護保険を申請する、または区分変更を相談する
・ケアマネジャーを決める
・手すりの位置を、実際の動きに合わせて決める
・ベッドや福祉用具のレンタルを手配する
手すりの位置は、見学したあとのほうが決めやすくなります。どこに手をついていたかが分かるからです。
⚠️ 手すりは、よく通る場所につけます。だからこそ「邪魔だ」と言われることがあります。その感覚は間違っていません。どこを優先するかは、別の記事にまとめました。
家に帰って、良くなる方もいます
退院のことを調べると、不安をあおる言葉が並びます。寝たきり、再骨折、筋力低下。気をつけることは確かに多いです。
ただ、家に帰ってから良くなった方も、確かにいました。
理由までは言い切れません。ただ、思い当たることはあります。
・家では動く用事がある(台所、トイレ、新聞を取りに行く)
・慣れた間取りなので、どこに何があるか分かっている
・自分の椅子、自分の布団、自分の高さ
・眠れる
病院は、安全ですが、動く用事がありません。ベッドから売店までを往復するくらいです。
⚠️ もちろん、全員がそうなるわけではありません。「帰れば良くなる」という話ではなく、「帰ったら悪くなると決まってもいない」という意味です。
退院してからの、最初の数週間
いちばん変化が大きい時期です。決めごとを少なくしておくほうが、うまくいきます。
やることを増やしすぎない
退院すると、やることが一度に増えます。通院、リハビリ、薬、手続き。全部を完璧にしようとすると、介護する側が先に疲れます。
できなくなったことがあれば、早めに伝える
「家に帰ったら、立ち上がりに時間がかかるようになった」。そういう変化は、遠慮せずに伝えてください。
通所や訪問のリハビリを使っていれば担当者に、使っていなければ、次の受診のときに医師に伝えます。
こんなときは、様子を見ずに連絡を
⚠️ 次のような場合は、次の受診を待たずに病院に連絡してください。
・また転んだ(痛みがなくても連絡を)
・骨折したところの痛みが、急に強くなった
・手術したところが赤く腫れている、熱を持っている
・熱が出ている
・急に立てなくなった、歩けなくなった
・足が片方だけ腫れている、ふくらはぎが痛い
・食事が極端に取れていない
「また転んだ」は、痛みがなくても連絡したほうがいい出来事です。一度折れた方は、また折れやすい状態にあります。
よくある質問
Q1 リハビリの見学は、お願いしてもいいのですか
聞いてみて構いません。病院によって決まりが違うので、断られることもありますが、尋ねること自体は失礼ではありません。
担当の理学療法士か、看護師、ソーシャルワーカーに相談してみてください。
Q2 どれくらいで元のように歩けますか
骨折した場所、手術の方法、もともとの状態で大きく変わります。日数で言い切れるものではありません。
担当の理学療法士は、その方の経過を見ています。一般論ではなく、その方についての見通しを聞いてください。
Q3 家族が仕事で、日中ひとりになります
その前提で相談してください。隠さずに伝えたほうが、現実的な計画になります。
日中ひとりかどうかで、必要なものも、使えるサービスも変わります。ソーシャルワーカーとケアマネジャーに、早い段階で伝えてください。
Q4 転ばせたくないので、できるだけ動かさないほうがいいですか
そこは自己判断にしないでください。骨折の状態によって、動かしてよい範囲が決まっていることがあります。
安静が必要な時期もあれば、動いたほうがいい時期もあります。どちらかは、担当者に確認してください。
まとめ
・「どこまで」は言葉では決まりません
・🔸 退院前にリハビリを見学させてもらうのがいちばん早い
・見るのは立ち上がる瞬間と、手をついている場所
・見たあとにすり合わせると、話が具体的になります
・住まいの整備は、退院を待たずに先に(申請と工事に時間がかかります)
・家に帰って良くなる方もいます
・⚠️ また転んだときは、痛みがなくても連絡を
「気をつけてください」と言われても、何に気をつければいいかは分かりません。
一度、動いているところを見てしまえば、分かります。
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